CドライブのSSDをSATAからM.2に交換する方法

OSをインストールするストレージ (SSD) には、大きく分けて2つの選択肢があります。従来の「2.5インチ」か、マザーボードに直接取り付ける「M.2」かです。

比較的新しい規格であるM.2は電源などのケーブル接続が不要。マザーボードにM.2スロットがあれば、ネジ止めするだけで使えるのが大きな利点です。しかしこんな疑問を持たれる方も多いかもしれません。

  • M.2にも色々種類があって、どれを選べばいいか分からない
  • Cドライブを交換するにはOSの再インストールが必要?
  • M.2に交換すると、実際のところどれほど速くなるのか

この疑問に答えるには、なんといっても実際の交換作業をご覧いただくのが一番でしょう。今回のメニューは、

  1. M.2 SSDの種類と選択基準
  2. マザーボードに取り付ける際の注意点
  3. Cドライブをクローンし、OSの再インストール無しで交換する方法
  4. NVMeはSATAと比べてどの程度速いのか?

「CドライブをM.2に交換したいけど躊躇している」という方、ぜひご覧ください。

M.2 SSDの選択基準

最初にストレージの選択基準から。
M.2 SSDはいくつかのタイプに分けられます。同じM.2だからといってどのマザーボードでも本来のパフォーマンスを活かせるわけではないという点に注意してください。

Amazonなどの商品ページでは容量以外にも、こういった箇所を重点的にチェックしておきましょう。

  1. SATAかNVMeか (接続規格)
  2. 2280かそれ以外か (ストレージの奥行きサイズ)
  3. Gen3かGen4か (PCIeの世代)
  4. 最大転送速度 (つまりどの程度の速度を出せるのか)

SATAかNVMeか (接続規格)

同じM.2でもSATA接続のSSDとNVMe接続のSSD両方が存在しています。下の画像はSATA接続のM.2 SSD。大抵は商品ページに「SATA」と記載されているので、注意していれば間違うことはありません。

また端子の形状も両者で異なっています。SATA接続のSSDは左右両端に切り欠きがある「B&M Key」と呼ばれる形状。一方のNVMe接続は片方のみに切り欠きが入った「M Key」がほとんどを占めます。

B&M KeyはM Keyよりも多くのスロットに取付可能。またSATA接続はNVMe接続に比べて若干安いものが多いですが、転送速度は従来の2.5インチSSDと同じで、NVMeの1/5程度となります。
速度重視の場合はNVMeを選択しましょう。

サイズ

M.2は奥行きの長さによって、いくつかのサイズが存在します。

  • 2280 (横幅22mm / 奥行き80mm)
  • 2260 (横幅22mm / 奥行き60mm)
  • 2242 (横幅22mm / 奥行き42mm)
  • 2230 (横幅22mm / 奥行き30mm)

など。この中で最も普及しているのは2280。マザーボードには2242まで対応しているものも多くありますが、デスクトップPCやPlayStationに内蔵する場合はあえて小さなサイズを選ぶメリットはありません。

Gen3かGen4か

NVMe接続は実際には「PCI Express」(PCIe) という規格を使ってデータを送受信しますが、このPCIeにも主に2つの種類があります。現在最も普及している「Gen3」(第3世代) と、より新しい「Gen4」(第4世代) です。

Gen4対応SSDの多くはシーケンシャルアクセスが速い (Gen3の2倍程度) という利点がありますが、一方で気をつけなければならない点もいくつかあります。

Gen4はマザーボードとCPUを選ぶ

マザーボードにM.2スロットがあるからといって、Gen4のスピードを活かし切れるとは限りません

Intel CPU用のマザーボードであれば、Gen4対応のM.2スロットがあること以外にCPUが第11世代以降である必要があります。
またAMDの場合も、CPUやチップセットの組み合わせによってはGen4の帯域をフルに使えません。
Gen4のM.2を選択する場合は、

  • マザーボードとCPUがどちらもGen4対応であるか
  • Gen4を利用できる組み合わせかどうか

を事前にチェックしておく必要があります。

なおPCIeには下位互換性があるので、Gen4のM.2は (速度は制限されますが) Gen3の環境でも使用すること自体は可能です。

Gen4は発熱量が多い

一般的にGen4対応M.2はGen3のものより発熱量が多いとされています。
SSDはCPUと同じく、温度が高くなると故障を防ぐために速度が制限されたり (サーマルスロットリング) 、高い温度で使用し続けると機器の寿命が短くなってしまいます。
Gen4対応M.2を使用する場合はヒートシンクの取り付けも考慮しておいた方が良いでしょう。
(マザーボードによっては、Gen4対応M.2スロットにヒートシンクが標準搭載されていることも多々あります)

Gen4は価格が高い

SATA SSDとM.2 SSDの価格差はほぼ無くなってきました。しかしGen4に関してはまだ実用化されてそれほど時間が経過していないのもあり、依然Gen3との差が大きいのが現状です。
体感できる速度差が大きくないということもあり、価格がこなれてくるまではGen3の方がコスパは高いと言えます。

今回使用するM.2 SSD

以上を踏まえ、僕が購入したストレージがこちら。

Western Digital SN570 500GB超ベタな選択ですがストレージに冒険は不要です。迷ったらメジャーな製品を選んでおきましょう。
Western Digital製のM.2 SSDには他にも「SN750SE」や「SN850」というGen4対応モデルもありますが、CPUがIntel 第10世代なのでGen3のモデルを選択しました。

M.2 SSDをマザーボードに取り付ける

それでは早速このSSDをマザーボードに取り付けていきます。
取り付けは非常に簡単です。パソコンのケースをオープンするとマザーボードがお目見え。

若干見にくくて申し訳ないですが、画面上部にそびえ立つ金属の塊がCPUクーラー。このマザーボードはそのすぐ下にGen4用のM.2スロットがあります。
Gen3用のスロットは画面右下。拡大するとこんな感じ。

このスロットにSSDを取り付けます。SSDの向きを切り欠きで合わせ、スロットに対してストレージを斜め上から差し込むイメージ。

ネジ側が結構浮き気味になりますが、全く気にする必要はありません。
後はストレージが動かないよう、普通にネジ止めするだけ。

注意点としては、このネジがストレージには付属していないという点です。今回はGen4のM.2スロットから拝借して取り付けていますが、良い子のみなさんはちゃんとM.2固定用のネジを準備しておきましょう。

取り付けが完了したらUEFIで確認します。僕が使用しているASRockのマザーボードでは【詳細モード > アドバンスド > ストレージ設定】を開くとこの画面に。

新しいSSDがちゃんと認識されていれば取り付け完了です。

Cドライブをクローンする方法 – MiniTool Partition Wizard

いよいよCドライブのクローンに取り掛かりましょう。今回は「MiniTool Partition Wizard」というソフトウェアをご提供頂いたので、こちらを使用します。

一番信頼できるディスクやパーティション管理製品|MiniTool
パーティションマジックの代替品として、MiniTool Partition Wizardは、Windows 11/10/8/7およびServer 2003/2008/2012/2016/2019のパーティション管理に使用できる最新のパーティション マネージャーです。

起動時の画面はこんな感じ。マシンに接続されているSSDやHDDが全て表示されます。
僕の環境では「ディスク1」に新しく取り付けたM.2 SSD、「ディスク2」に現在のCドライブである2.5インチSSDが表示されました。早速ディスク2→1へデータをクローンしてみます。

Cドライブをクローンする

OSがインストールされているドライブをクローンするには、サイドバー「OSをSSD/HDDに移行」をクリック。

移行ウィザード画面が新たに開きます。最初の選択肢の違いを一言で表すと、Aが「複製」Bが「移動」です。ここではAを選択して「次へ」。

移行先のSSDを選択します。ディスク1を選択して「次へ」をクリック。

次の画面では2つの選択肢があります。
上のオプション「パーティションをディスク全体に合わせる」を選択すると、元のSSDより新しいSSDの容量が多い場合、余った容量も含めてCドライブに

下のオプション「パーティションをサイズ変更せずにコピーする」は元のSSDと同じ容量だけを使用し、余った容量を未割り当てとします。
SSDのパーティションを分割したいなどの場合は下を選択しましょう。

今回はパーティションを切り分けず、Cドライブ単体として使用するので上を選択。

ウィザードを抜けると、これまでに設定した操作がサイドバー下部「保留中の操作」に登録され、ディスク1の表示が操作後の構成に更新されました。
この時点ではあくまで「実行したらこうなるよ」というプレビュー表示です。

ディスク1のドライブレターが「H:」となっていますが、そのままで問題ありません。「適用」をクリックして実行しましょう。
(他のプログラムは終了しておくことをおすすめします)

プログレスバーが100%になればクローンは終了。ここまでマシンを再起動する必要が無いのは嬉しいポイントです。

ブートドライブの優先順位を切り替える

クローン作業終了後、OSを起動するブートドライブを切り替えます。
マシンを再起動してUEFIの設定画面に入り、【詳細モード > 起動 > 起動優先順位】から「ブートドライブ #1」に新しいSSDを指定しましょう。
(UEFIのメニュー構成はマザーボードによって異なります)

これでOSを起動するストレージが新しいSSDに切り替わりました。設定を保存し、再起動して確認しておきます。

ディスク1がCドライブとなり、古いSSDからはドライブレターが取り払われています。これで移行作業は完了。ディスク2を今後もストレージとして利用したい方は、ディスク全体をNTFSでフォーマットし直せばOKです。

無料版でも機能豊富

「OSのドライブデータをクローンする」機能は、残念ながら有料オプションとなっています。
しかしこのソフトウェア、無料版でもCドライブ以外のストレージをクローンすることは可能です。またストレージの使用状況をチェックしたり、FATからNTFSに変換できたりとかなり多機能。
ストレージやパーティションに関するソフトウェアをお探しの方は、一度無料版をダウンロードして試してみてください。

無料パーティション管理ソフト - MiniTool Partition Wizard 無料版
オールインワンの無料パーティション マネージャーおよびディスク マネージャーソフトウェアとして、MiniTool Partition Wizard 無料版はWindows 11/10/8/7でディスクスペースを安全に管理することができます。

M.2 SSDはSATA SSDに比べてどれほど速いのか?

ストレージの交換が終了したところで、お約束の速度計測といきましょう。計測にはCrystalDiskMarkを使用しています。

CrystalDiskMark - Crystal Dew World [ja]
各種ストレージ (HDD, SSD, USBメモリなど) の速度を測定するベンチマークソフトです。 ダウンロー

上の画像が元々のSATA接続SSD、下が今回取り付けたM.2 SSDです。

シーケンシャルアクセスはSATA SSDに比べ、約7倍速いという結果。カタログ値とほぼ同等の数値が出ています。
ただシーケンシャルアクセスは容量の大きなファイル (動画ファイルなど) を扱う場合に重要になってくる項目で、実際の体感速度 (OSやアプリの起動など) はほとんどの場合ランダムアクセスの速さによって決まります。

一番下の段、シングルスレッドのランダムアクセスに関しては読み込みで約2倍、書き込みで約1.5倍の速度ですが、実際のところはどうでしょうか?
マシンにインストールされている中から起動に時間がかかりそうなアプリやゲームを起動し、その違いを計測してみました。

計測 SATA SSD M.2 SSD
Windows11 1m 05s 0m 41s
Gimp (画像編集アプリ) 0m 12s 0m 11s
DaVinci Resolve (動画編集アプリ) 0m 11s 0m 09s
Horizon Zero Dawn (3Dゲーム) 0m 31s 0m 19s

Windowsや重いゲームに関しては、確かにランダムリードの差が起動時間の差として現れています。
ただ一方で、起動時間10秒程度のソフトウェアでは体感できるほどの差は出ない印象。

転送速度向上の効果は確実にあります。ただしHDDからSSDに交換したときのような劇的な変化は感じられないでしょう。

今回のまとめと補足情報

今回のまとめです。

  • 速度を求めるならSSDはNVMe接続を選べ
  • M.2 SSDのサイズは2280が鉄板
  • Gen3もまだまだ現役。Gen4は手持ちのCPUやマザーボードと相談
  • Gen4のM.2は発熱量が多い。ヒートシンクを取り付けて安定動作と長寿命を
  • 取り付けは配線不要で楽ちん。ただし固定用のネジは必要
  • Cドライブの交換にはクローンが絶対おすすめ
  • NVMeは確かに速いが、体感上はSATAと比べて劇的な違いがあるとまでは言えない

条件を満たすNVMe接続のM.2 SSD

最後に今回使用したM.2 SSDと、そのライバルとなり得るSSDをいくつかご紹介します。

▲ 今回使用したものと同じモデル。迷ったらコレ。容量は500GBと1TBの2種類あります。

▲ スペック的にはWestern Digitalと同等。SamsungのSSDも実績は申し分無し。

▲ こちらはGen4モデル。読み取り速度を7,000MB/秒にまで引き上げ、PS5用ストレージとして人気が爆発。

▲ CrucialのSSDはこれまで2台使ってきましたが、2台とも故障知らずでおすすめ。こちらもGen4モデルで、PS5対応を謳った高速SSD。