最近「Craft」というノートアプリが一部で話題になっていますが、ハッキリ言っておきましょう。CraftはNotionには勝てません。
理由なんていくらでも挙げられます。例えば、
- 無料アカウントは1000ブロックまでしか保存できない
- データベース機能が無い
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CraftとNotionをガチ比較? 冗談でしょ。機能面ではNotion。これは絶対です。
しかし、だとするとなぜCraftは約8.8億円もの資金を調達でき、App Store Awards 2021のベストMac Appを受賞できたのでしょうか?
今回はそんな「Craft」の知られざる魅力をご紹介しましょう。
Craftとはどんなアプリか?
カテゴリとしては「デジタルノート / メモアプリ」というのが最も近いでしょうか。よりシンプルで直感的な操作に重点を置き、Notionから「情報管理機能」を省いたようなイメージです。
起動直後の画面はこんな感じ。こちらはMac版。
デイリーノートやフレキシブルなウインドウ/タブ操作はNotionには無い機能。利用可能なショートカットキーは画面右上のボタンから確認できます。
そして下がiPad版。機能的にはMacアプリと変わりません。
しかし後で詳しく触れますが、CraftはこのiPad版こそがより真価を発揮できるアプリと言えるでしょう。
CraftとNotionの共通点
冒頭で申し上げた通り、CraftとNotionは別物です。しかし「デジタルノートアプリ」として見た場合、両者には共通点も多くあります。
ということで細かな使い方に入る前に、CraftとNotionの共通点といくつかの相違点をチェックしておきましょう。
ノート内の要素を「ブロック」単位で扱う
両者とも段落やリスト項目などの要素は「ブロック」という単位で管理され、改行とは区別されています。
(Enterで改段落、Shift + Enterで改行)
ブロックはドラッグすることで自由に場所を移動できます。
ただしCraftはNotionのように、テキストのカラムを分けることはできません。
ブロックは複数選択し、まとめて処理することが可能です。単純に文字のスタイルを変更したり、
リスト形式やチェックボックス (ToDoリスト) に変化させることもできます。
子要素を折り畳める「折りたたみリスト」も両者共通。Notionでは「Toggle list」という名称で実装されています。
テキスト以外の要素を挿入
通常のテキストやリストの他、水平線や表、コードブロック、数式ブロック (Tex) を挿入することが可能。ただしコードブロックのシンタックスハイライトは有料アカウントでしか使えません。
この点はやはり、一通りの言語に対応しているNotionの方が一枚上手。
マルチメディアの挿入
画像やPDF、YouTube動画や音声ファイルの挿入はどちらのアプリでも対応。
画像は選択してSpaceを押すとQuickLookのようなウインドウが開き、大きな画面でプレビューできます。
Craftの場合、大きめの画像は2枚まで、YouTube動画や音声ファイルなら3つまで横並びで表示可能。他にも数種類の表示形式が用意されています。
ただしCraftには、NotionのようなYouTube動画の埋め込み機能はありません。
上の画像のようにページ内で動画を再生することはできず、あくまでリンクとしてしか機能しないので注意。
スラッシュコマンド
「迷ったらスラッシュ」でお馴染みのスラッシュコマンドは両者とも対応。好きな場所で半角スラッシュ /を打ち込めば、その場にメニューが表示されます。
ページ間リンク
あるページから他のページへリンクを張る機能は、これからのテキスト系アプリには必須と言えるかもしれません。もちろん両者とも対応。
Notionでは[[を打ち込んでリンクを作成しますが、Craftでは@です。
ファイル単位でのリンクはもちろん、ブロック単位でリンクできるのは嬉しいところ。ここから新規ファイルを作成することもできます。
Craftを使うならiPhoneやiPadがおすすめ
以上のようにNotionとの共通点も多いCraftですが、それだけではCraftを選ぶ理由にはなりません。
なにしろNotionには「全ての情報を一元管理する」という壮大なコンセプトと、それを実現できるだけの懐の深さがあります。
ではCraftを選ぶ理由になり得る、ユニークな魅力とは一体何でしょうか?
真っ先に思いつくのは、やはりモバイルアプリの操作性でしょう。
Craftは元々Apple製品で利用することを想定して設計されているだけに、iPhoneやiPadでの操作がすこぶる快適。
ここからはiPadアプリを実際に使いながら、Craftの奥深さを体感してみましょう。iPhoneやiPadをお持ちの皆さん、ぜひ一緒に触ってみてください。
(今回ご紹介する機能は全て無料で利用可能)
ボタンタップで新規ノート作成
はじめに新しいノートを作成します。新規作成は画面右上のボタンをタップ。
開いたページの先頭にテキストを入力すれば、それがノートのタイトルになります。
テキストを装飾する
タイトルを入力したら、そのまま本文に移ってテキストを入力していきましょう。
ブロック内のテキストを部分的に装飾するには、装飾したい部分をダブルタップ → ドラッグして範囲選択。
画面下にマーカーや太字などのメニューアイコンが現れます。
Craftのマーカーは文字色変更も可能。他のアプリではなかなかお目にかかれないグラデーションカラーが楽しい。
Undo / Redoは3本指スワイプ
直前の操作を取り消すアンドゥは3本指で左にスワイプ、取り消した操作を元に戻すリドゥは3本指で右にスワイプ。
割と頻繁に利用するコマンドなので要チェックです。
なおこの操作は画面右上に「完了」ボタンが表示されている (編集モードの) ときにしか使えません。
検索は2本指タップ
ノート内のテキストやファイルを検索するには2本指タップ。この操作は編集モードでも閲覧モードでも可能です。
有料アカウントであれば、ブロック単位でも検索できます。
スワイプか長押しでブロック選択
次にブロック全体を選択してみましょう。モバイル端末では左右どちらかにスワイプするか長押しすると、ブロックを選択できます。
画面下に専用のメニューアイコンが表示されました。見出しにしたりブロックをコピーするなど、様々な操作がここから実行できます。
ここでは「スタイル」から文字色を変更し、スタイル内の「もっと…」をタップして「キャプション」を選んでみました。キャプションは文字を小さくし、注釈のような見た目に変更します。
また長押しでブロックを選択すると、そのままドラッグで他の場所に移動することが可能。
ブロックを選択 → ドラッグで複数選択
続いて複数ブロックの選択です。一つのブロックを選択してから他のブロックをタップするか、ブロック選択時に表示される青丸部分をドラッグしてみてください。
この状態でスタイルを変更すると、選択されたブロック全てに同じスタイルを適用します。
グループ機能
複数ブロックを選択したときに有効になる機能がグループです。グループを作成するにはメニューアイコンの「グループ」をタップ。
選択した部分が1つのブロックに収まりました。
グループはただ単に複数ブロックをまとめる機能ではなく、新しいノートを作成する機能です。タップして開いてみると、
最初に作成したノートの内部に新しいノートができていることが確認できます。
このページも普通に編集可能ですが、今回は元々のページに戻り、このノートを1つのブロックとして扱ってみましょう。
グループの見た目を変更する
グループをスワイプで選択 → 「スタイル」→「もっと…」をタップするとメニューアイコンがこの形に。
ここで「カード」をタップ。
カードの表示形式を選択する画面が開きます。
ここでは、
- カードスタイル (表示する大きさ)
- フォントスタイル (表示する文字のフォント)
- バックグラウンドスタイル (背景のカラーや画像)
の3つをそれぞれ選択。バックグラウンドはプリセットの他、ご自身で撮影した写真やUnsplashのフリー素材を使用することもできるので、かなり自由度が高いです。
(無料アカウントの場合、選べるカードスタイルは2種類のみ)
スタイルを適用すると、
グループがまるでカードのような見た目に変更されました。ノートの本文部分をチラ見せしてくれるのも機能的で、多くの方に受け入れられやすいデザインでしょう。
グループをノート外に移動する
このグループの実体はあくまで1つのノートですが、通常のノートとは異なる点があります。サイドメニューから「全てのドキュメント」を表示してみると、
新しいノートはどこにも見当たりません。グループはあくまで「あるノート内にしか存在しない」ノートであることに注意してください。
それだと使いにくい? なら単純に新しいノートを外に出せばいいだけの話です。グループを長押し → ドラッグしてフォルダに持ち出しましょう。
これでグループはフォルダ内に移動し、独立したノートとなります。
元々の場所からは消去されるので、ここからもアクセスしたい場合は@でリンクしておきましょう。
iPadならではの操作
これまでご紹介してきたように、Craftの特徴は「直感的な操作」にあります。
スワイプで選択し、ドラッグで自由に移動する。何かを変更したければメニューから実行する。つまりタッチ操作に最適化されたデジタルノートアプリ。それがCraftです。
ここからはiPhoneよりもさらに多彩なタッチ操作に対応しているiPadならではの操作をいくつかご紹介します。
手書き機能
テキストもいいけど、やっぱりiPadといえば手書きですよ。これに対応しているのは結構デカい。
早速書いてみましょう。テキスト以外の要素を追加するなら、画面下側の+アイコンをタップします。
画像や表、紙媒体のスキャンなどもここから。手書きするにはこの中の「スケッチ」をタップしましょう。
iPadOS標準の手書き機能が起動し、自由に手書きできます。
画面左上「完了」ボタンをタップすると、手書きしたファイルが画像としてノート内に保存されます。
再び編集したい場合はタップしてください。
なお取り込んだ画像に手書きで編集を加えることもできます。
編集するには画像をタップして選択し、右上に表示されるペンのアイコンをタップです。
Split ViewとSlide Over
iPadならではの機能、2つ目はSplit ViewとSlide Over。これを使いこなせれば、Craftでのノート作りがより楽しくなるでしょう。
例えば写真アプリから画像を追加するには、+アイコンとは別の方法があります。写真アプリをSlide OverやSplit Viewで立ち上げ、そこから選択してCraftにドラッグです。
Webサイトから画像やテキストをペースト
同じことをWebサイトでもやってみましょう。今度はSafariをSplit Viewで立ち上げ、ページ上の画像をドラッグ。
テキストも同様、選択してからドラッグでペーストです。
WebサイトからURLをペースト
Amazonで欲しいアイテムが見つかったり、クラシルやクックパッドで気になるレシピがあればそれをそのままCraftに保存しておきましょう。
画像ではCraft側をSlide Overで表示し、SafariのURL欄を長押ししてCraftにドラッグしています。もちろんSplit ViewでもOKです。
気になるURLはどんどん追加していきましょう。ペーストしたURLがこんな風に表示されます。
URL整理は「カード」が映える
しかしこれではなんとなく味気ない気もするので、もう少し楽しい表示に切り替えておきたいところ。
操作はもうお馴染みの、スワイプでブロック選択 → ドラッグで複数選択です。そこからメニューの「レイアウト」をタップ。
3種類の表示方法から「カード」をタップすると、
アイテムや料理の画像がタイル状に並びます。
ここからグループ機能で新しいノートにまとめるも良し、デイリーノートに「今日作った料理」としてメモっておくのも良し。
Craftの実用的な楽しさがより広がる「手書き機能」と「Split View」「Slide Over」をぜひ試してみてください。
Craftはノート作成を「楽しむ」アプリ
今回は新世代ノートアプリ「Craft」を主役に取り上げてきました。しかし最後にもう一度言っておきます。機能の豊富さならNotionの圧勝です。
しかしモバイルアプリの操作性では、CraftはNotionを遥かに凌駕します。
Craftは「大量の情報を一元管理できるツール」でも「何でもこなせる万能アプリ」でもありません。いつでもどこでも (iPhoneやiPadを使って) 、楽しみながらノートを作成できるアプリです。
- Notionを使ってみたけど、なんとなく自分には合わない
- パソコンよりiPhoneやiPadの使用頻度が高い
- より楽しみながら、よりオシャレなノートを作りたい
そんなあなたにはCraftがハマるでしょう。そして一度ハマってしまえば、一週間後にはこんなことを言っているかもしれません。
「iPadでNotion? 冗談でしょ」