Obsidian第四の矢「新規ウインドウで開く」がもたらすもの

Obsidianがこれまでにいくつものアップデートを重ね、進化してきたのはご存知の通りです。
その中でも代表的な大型アップデートを、ここではObsidianが放つ「六本の矢」と呼称します。

  1. コミュニティプラグイン
  2. モバイルアプリ
  3. ライブプレビュー (v0.13~)
  4. 新規ウインドウで開く (v0.15~)
  5. タブの概念 (v1.0~)
  6. Canvas (v1.1~)

この中で最も地味で、実装時でさえほとんど話題にも上らなかった悲しきニューカマー、それが「新規ウインドウで開く」です。

英語では「Pop-out windows」ですが、ポップアッププレビューと混同する可能性を考え、この名称は使用しません。

他の大型アップデートと同列に語ること自体、違和感を覚える方もいるでしょう。
「そんなの、できて当たり前じゃないか」と。

確かに新規ウインドウで開く動作はファイル操作アプリやWebブラウザでは当たり前の機能であり、実装されたからといって驚くようなものでは全くありません。
しかしそれでも、僕はこの機能を「第四の矢」として位置付けることが妥当であると考えます。

というわけで今回は、
2022年後半、待ちに待った機能が実装され、そのタイミングで記事も書こうとしていたけど、なんやかんやでうやむやになったまま放置している間、誰にもあんまり使われてる感じも無く、でも個人的にはヘビーに使ってるし、ちょうど書けるタイミングが来たから今ここで取り上げておかないと一生書けないかもしれない、超記事にしにくい重要機能

「新規ウインドウで開く」について。

新規ウインドウで開いてみよう!

ノートを新規ウインドウで開くには、以下の4つの方法があります。

  • タブをウインドウの外側まで大きくドラッグ
  • ファイルエクスプローラーで右クリック →【Open in new window】
  • 内部リンクを右クリック →【Open in new window】
  • ノートを開いてコマンドパレット【Open (Move) current tab in (to) new window】
    • (Openはタブがコピーされ、Moveはタブを新規ウインドウに移動します)

コマンドパレットを使う場合、Obsidianの言語を日本語に設定されている方は「新規」や「ウィンドウ」で検索してみてください。(「ウンドウ」ではなく)

新しいウインドウはもちろん、自由に場所を移動できます。
仮想デスクトップやマルチディスプレイ環境なら、メインウインドウと完全に切り離してしまうことも容易です。

切り離したウインドウを元に戻すには、対象のタブをメインウインドウ側にドラッグすればOK。

注意点としては、サイドバーやステータスバーが表示できないこと。
それ以外はメインウインドウと同じように扱えます。

それだけ?

操作に関することは以上です。

……何か問題でも?

補足: 似て非なる機能

Obsidianには以前から「別Vaultを別ウインドウで開く」機能は存在していました。
画面左下のアイコンかコマンドパレットで【Open another vault】を選択してみましょう。

ただこれは「別のVaultを」別のウインドウで開いているという点で、今回お話ししているものとは全く意味合いが異なります。
1つのVaultで複数のウインドウ。これができるのが非常に大きいんです。

アップデートした執筆環境

と熱弁したところで、人によってはこのありがたみがなかなかイメージしにくいかもしれません。
そこで僕がどのようにObsidianを利用しているのか。そのウインドウ構成を少しだけお見せしましょう。

以前の執筆環境とその問題点

最近まで使用していた執筆環境。左側は4K解像度の外部ディスプレイ、右側にMacBook Airです。
Webの情報を閲覧しながら、Obsidianのメモと合わせてTyporaで執筆するという感じですね。
仮想デスクトップで何とかするしかなかったシングルディスプレイ時代と比較すると、画面切り替えの手間が無い分快適に作業できます。

ただこの4Kディスプレイ環境にも大きな問題がありました。
とにかく気が散るんです。

Webブラウザを常に表示していると、何か気になったことがあればすぐに調べられるというメリットもありますが、その分思考が関係無い方向へ脱線してしまう危険性も高まります。
脱線が全て悪であるとは言いません。しかし集中して1つの記事を仕上げたい場合はできるだけ避けたいのも事実。

これに加え、2023年に入るとTyporaのライブレンダリング周りの挙動に不満が出始めました。その結果、

  • 執筆中はWebブラウザを表示せず、執筆内容に関係ある資料だけを表示したい
  • Obsidianを執筆用のエディタとしても使いたい

という2つのニーズが生まれます。

現在の執筆環境

そこで考えた結果が現在の執筆環境。
見ての通り左にCanvas、右に執筆中の記事が表示されています。どちらもObsidianのウインドウです。

2つの画面上には執筆中の記事に関することしか表示されていません。
「情報収集」と「執筆」をほぼ完全に分離し、関連資料を事前にCanvasに放り込んでおくことで、執筆中はWebブラウザを見ることなく全ての情報を閲覧できるようにしています。

Webブラウザは仮想デスクトップで待機

もし執筆途中で新たにWebの情報が必要になったり、画像を編集する必要があれば、外部ディスプレイの仮想デスクトップを切り替え。

このデスクトップにはWebブラウザ、画像編集アプリ、(元のデスクトップと同じ) Canvasノートが待機していて、気になる情報があればCanvasの空いたスペースにURLをドラッグすると、元のデスクトップにもその記事が追加されるという寸法。
なので執筆時は基本的に、最初のデスクトップのみ使用しています。

「新規ウインドウで開く」がもたらす恩恵

より新しい機能であるCanvasはそれまでのHover Editorよりシンプルで扱いやすく、資料を一カ所に集めて考えるにはうってつけの場を提供してくれます。
また高解像度ディスプレイはそれを強力にサポートする、今となっては無くてはならない道具のひとつです。

ただ新規ウィンドウで開く機能が無ければ、僕は今でもObsidianを執筆用エディタとしては活用できずにいたでしょう。「考える場」か「エディタ」か、どちらかを選択する必要に迫られ、考える場として使うことを優先していたでしょう。

ペインを分割すれば、あるいはタブを複数開けば「ある程度の両立は可能である」という意見は、全くその通りです。

しかしこの方法ではCanvasのスペースを削ぎ落とす、もしくは表示するタブを切り替える手間を増やすといった代償を支払う必要があります。

それではダメです。
あくまでマイナスの無い、純粋なプラスでなければならない。そうでなければエディタとしては使えない。
そのワガママを叶えてくれたのは「新規ウインドウで開く」という、ささやかで地味なアップデートでした。

あなたがもし単一のウインドウでしかObsidianを使ったことが無いなら、一度は試してみることをおすすめします。その環境下で本当に役に立つかどうか、それは何とも言えませんが。

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