「iPadはパソコンの代わりになるか?」とザックリ問われれば、僕は迷わず「なる」と答えます。ただしこう付け加えるでしょう。
「なぜわざわざiPadをパソコンの代わりに使おうとするのか?」
当たり前ですがiPadはパソコンではありません。ましてやパソコンの入門機でもありません。
もしあなたがパソコンを既にお持ちなら僕は何も言いませんが、最初のメインデバイスにはiPadではなくパソコン (特にノートパソコン) を選ぶべきです。
今回のメニューは、
- パソコンとiPadの明確な違い
- だから最初はパソコンを選べ
- iPadをパソコンの代わりにするな – パソコンには無いiPadの魅力
特に「スマホの次のデバイスをパソコンにするかiPadにするか迷っている」方の参考になれば幸いです。
パソコンとiPadの明確な違い
入力方法と操作スタイルが違う
最初にパソコンとiPadの違いをおさらいしておきましょう。最も大きな違いは入力方法と操作スタイルです。
- パソコンはキーボードとマウス (やタッチパッド) を使い、デスクやテーブルの上に置いて操作する
- iPadは指を使い、手に持ったりスタンドに立てて操作する
今さらと思われるかもしれませんが、これは極めて重要なこと。なぜならこの操作スタイルの違いが、そのままデバイスとしての守備範囲や立ち位置を決定づける要因となるからです。
パソコン | iPad | |
---|---|---|
入力 | キーボードとマウス | タッチ操作 |
使用する場所 | デスクなど平坦な場所 | 基本的にどこでもOK |
重量 | 1kg ~ 1.3kg程度 | 約500g (Air) |
画面サイズ | 14インチ前後 | 10.9インチ (Air) |
前提として、パソコンは程度の差こそあれど「腰を据えて」作業するデバイスであり、iPadはリビングのソファでも、あるいは立った状態でも作業できる「お手軽な運用」が可能なデバイスであると押さえておきましょう。
OSもアプリケーションも違う
この違いは、そもそも搭載されているOSが違うことに由来します。iPadが搭載しているOSは「iPadOS」であり、WindowsOSやMacOSといったパソコン用のOSではありません。
iPadOSはタッチやスタイラスペンによる直感的な操作がスムーズで、マシンのメモリが少なくても軽快に動作しますが、その一方でマルチタスクやデータの一覧性など、パソコンが得意とする分野を苦手としています。
また同じ名前のアプリケーションでも、iPadアプリはパソコンアプリより機能が制限されていることがほとんど。
同じアプリを使ってできることの範囲で言えば、iPadはパソコンに及ばないと言えるでしょう。
iPadは手軽だが、機能で劣る
- iPadはパソコンよりも持ち運びしやすく、手軽に使える
- OSやアプリの機能ではパソコンが有利
これは「道具の大原則」にそっくりそのまま当てはまります。つまりこういうことです。
可搬性や設置の自由度 (手軽さ) を上げれば上げるほど、作業効率や機能性の上限は下がる。
そしてこの位置は、同じデバイスでもある程度左右に移動できるということも付け加えておきます。
簡単な例を挙げましょう。例えばiPadでテキストを入力するとします。
もちろんiPad単体でも入力自体は可能です。しかし長文となると、どうしてもスクリーンキーボードでは打ちにくい。
そこで、ここにBluetoothキーボードを接続したとします。
そうするとどうなるか?
文字入力という機能が強化される代わりに、手軽さは失われました。文字を素早く打つためにキーボードを使う。そのためにはキーボードを置くスペースが必要になる。
ユーザーはソファでダラダラするわけにはいかなくなったわけです。
これが新しいデバイスを選ぶ上で最大のポイントとなります。
あなたはそのデバイスを選ぶことによって「何を手に入れ、何を諦めるか?」
だから最初はパソコンを選べ
何を諦めるか?
新しいマシンを選ぶ。それはとてもワクワクする行為です。そのマシンを手に入れることによって得られるいくつもの体験 (何を手に入れるか?) を想像すると、ワクワクせずにはいられません。
でも少し立ち止まって考えてほしいんです。そのマシンを選ぶことで「何を諦めるか」を。
今回の場合であれば、こういうことになるでしょう。
- パソコンを選んだ場合:
- より多くの機能を手に入れ、運用の手軽さを諦める
- iPadを選んだ場合:
- どこでも操作できる手軽さを手に入れ、作業効率やアプリの一部機能を諦める
最初は機能を重視する
もし僕がパソコンもiPadも持っていなければ、この2択なら絶対に機能を選びます。
極論を言えばiPhoneでも動画を編集できるし、プログラミングはiPadでも可能です。しかし少なくとも追加オプション (キーボードや有料アプリ) 無しの状態では、パソコンの作業効率に遠く及びません。
「できる」と「快適にできる」「苦労せずにできる」は全く違うんです。
iPadでパソコンと同等の作業効率を叩き出すためにはそれなりの工夫が必要だし、また工夫ではどうしようもない場面もあるでしょう。(例えばiPadのExcelは関数を実行できません)
それに比べれば、多少の重量増や設置の自由度を失うことは大した問題ではないと考えます。
コストと重量について
「そうは言ってもパソコンは高いし重い」とお考えの方に、1つデータをお示ししておきましょう。
MacBook AirとiPad Airの価格と重量、そしてiPadをパソコンに近づけるための代表的なオプション製品の価格と、あなたが持ち運ぶことになる総重量です。
iPad Air (256GB SSD) | MacBook Air (256GB SSD) | |
---|---|---|
本体価格 [重量] | 87,780円 [458g] | 115,280円 [1290g] |
Apple Pencil(第2世代) | 15,950円 [20.7g] | – |
(トラックパッド付きキーボードカバー) | ||
Apple Magic Keyboard | 34,980円 [計1054g] | – |
Logicool Combo Touch | 20,700円 [計1032g] | – |
Logicool Folio Touch | 17,800円 [計1100g] | – |
(キーボードカバー) | ||
Apple Smart Keyboard Folio | 21,800円 [計753g] | – |
パソコンに近づけようと利便性を追求すると、結局はコストも重量もパソコンとそう変わらなくなってしまうのが現実。コストを抑えるにはSSDの容量やトラックパッドを諦めるなど、何らかの我慢や工夫が必要になります。
iPadをパソコンの代わりにするな
ここまでが「初めてのメインデバイス」にiPadをおすすめしない理由です。しかし誤解の無いように言っておきますが、「iPadを買うな」とはこれっぽっちも思っていません。
僕自身iPadとは約10年の付き合いだし、別れるなんて考えたことも無い。それどころかデバイスとしての完成度はMacBookより優れているとさえ思っています。
ただ「iPadをパソコンの代わりにするのは無理がある」と言っているだけです。iPadを使うなら、より【iPadらしい使い方】をおすすめします。
パソコンには無いiPadの魅力
パソコンには無いiPadらしさとは何か。僕はそれこそが手書き機能、特にApple Pencilを使ったペン入力にあると考えています。
使ってみれば分かりますが、これが最高に素晴らしい。もしApple Pencilが無ければ、iPadは今でもただの「デカいiPhone」でしかなかったでしょう。
一応お伝えしておくと、パソコンでは全く手書きできないわけではありません。Windowsパソコンならペン入力に対応したモデルも多数リリースされているし、実際僕も所有しています。
しかし正直言って、アプリの質もペン自体の書き味も、iPad + Apple Pencilの足元にも及びません。
この分野では元々タッチ操作を前提に作られたiPadOSの方が断然強いと言い切れます。
iPadは「補完」するユニークなデバイスである
iPadを購入するならぜひともApple Pencilとセットで考えてください。Apple Pencilを手に入れることによってiPadは、
- 学習に強い
- ノートとして使える
- 資料をPDF化して直接書き込める
- 即時メモに強い
- クイックメモを瞬時に起動し、即書き込める
- イラストやスケッチに強い
- 場所を選ばずアイデアを形にできる
こんなデバイスへと進化します。これらはどれもパソコンが苦手とする分野であり、実にiPadらしい使い方です。
キーボードやマウスを追加してタッチ操作を封印してしまうような違和感は全くありません。iPadはやはり手に持って (あるいは指が画面に届く位置で) 使うのが最も自然であり、タッチ操作が一番しっくり来るんです。
そしてiPadはiPadらしく使うことで、よりユニークかつ代替のきかない存在となるでしょう。
何しろスマホより高機能でパソコンより持ち運びやすく、スマホで撮影した写真やパソコンのPDFにも簡単にアクセスし、手書きで編集できてしまう。
そんなデバイスはどこを探しても、他には無いんです。
まとめ
今回のまとめです。
- どちらを買うか迷ったら「何を諦めるか?」にフォーカスすべき
- パソコンに寄せようとすると、iPadは結局重くなりコストもかかる
- Apple Pencilが無ければ、iPadはただのデカいiPhone + αでしかない
- iPadはiPadらしく使え
以上。
迷ったらこれを買え
最後にオマケとして「僕ならこれを買う」おすすめ構成をご紹介しておきます。
▲ iPad / iPhoneと組み合わせるプライベート用パソコンならやはりMacBook。それもダントツでコスパに優れる最小構成のAirを推します。
動画編集など重めの作業を視野に入れるなら、メモリを16GBにアップグレードしておきましょう。
▲ iPadは無印でもパフォーマンス的には十分です。ただApple Pencil第2世代が使えない、Type-C端子が使えないといった点を考えると、これからはやはりAirが第一候補になるのではないでしょうか。
動画や写真を多く保存するなら、SSDは256GBが安心。
▲ Apple PencilはiPadには必須です。こちらは無印以外に対応する第2世代。無印の場合は第1世代にしか対応していないので注意してください。