今回は『思考を耕すノートのつくり方』という本の書籍レビューでございます。
いやぁ嬉しいですね。まさか倉下さんから新刊をご恵投いただけるとは。
そんなに前回のレビュー記事が良かったんでしょうか……そうは思えませんが。
まぁ今回は前回と違ってご恵投していただいている身なので、言っときますけどバリバリ忖度しますよ。
当たり前じゃないですか、そんなの。
最近はいろんな事件もあって「忖度 = 悪」というイメージを持たれている方も多く見受けられますが、むしろ忖度できてこその社会人ですよ!
忖度こそ人間関係の潤滑油。むしろ社会は忖度で成り立ってるんです! (過言)
それでは参りましょう。
忖度は外見から
実際の見た目はこんな感じ。
いいですね。この何とも言えない緑がかった濃いグレー。
帯のキャッチフレーズは……
「ノート」が変われば「思考」が変わる。
「思考」が変われば「行動」が変わる。
「行動」が変われば「人生」が変わる。
うん、どっかで聞いたフレーズだな。(忖度しろよ)
ここから真面目にやります
とりあえず「帯の色を褒める」という忖度ノルマは達成したので、ここからは内容について真面目にお話ししていきたいと思います。
まずこの本の構成をざっくりご紹介しておくと、
- ノートの種類やその使い方について、これでもかと紹介しまくる
- (紙質やサイズ、罫線、書き方、どこにどう書くかなど)
- 様々な書き方と押さえるべきポイントについて、事細かに解説する
- (日記、勉強ノート、タスクリスト、読書メモなど)
- いくつかのQ&Aを例示して、迷える子羊たちに手を差し伸べる
という感じ。
全体の内容をギュッとまとめて端的に表現するなら、要点はこういうことでしょう。
- ノートとかその使い方、書き方ってめちゃくちゃ沢山あるから、できるだけ紹介するわ!
- でもどれが最強ってのは無いから、最終的には自分でアレンジしてね!
デジタルノートに関しての直接的な記述はほとんどありません。基本的にはアナログノートとその書き方について深く掘り下げ、広く紹介する。そういう内容なんですが、デジタル派の僕も色々と考えさせられる内容でした。
それについては後でお話しするとして、まずは「なぜこんな構成になっているのか」を少し考えてみましょう。
世の中、ツール多すぎ問題
A3からA4、B5といったサイズ、
罫線、方眼、無地、時系列といったページデザイン、
ノート、ルーズリーフ、ホワイトボード、スマホにタブレット、PCといった形……
今思いつく「書かれるもの」を列挙しただけでも、これだけの数が存在します。
「書くもの」まで含めればボールペン、鉛筆、万年筆、蛍光ペン、キーボード……
「ノート術」だってコーネルメソッド、マインドマップ、付箋ノート、バレットジャーナル、マンダラート等々、挙げ始めたらキリがありません。
一体なぜ、こんなに大量のツール (道具やフォーマット、メソッド) が存在しているのか?
僕はその大きな要因として「ニーズ (要望) の多様性」を挙げたいと思います。
現在手に入れられる道具やアプリケーションは、誰かに必要とされたからこそ開発され、ある程度のユーザー数が確保できているから継続的に販売されているわけで、需要が無ければ淘汰の対象となる。
書き方やノート術だって同じことです。バレットジャーナルやコーネルメソッドはある種のテンプレートであり、ある程度多くの人に認められたからこそ広まったわけで、理由も無しにノート術として確立されるようなことはないでしょう。
つまり現代は、多様なニーズに対応するツールがすでに具現化された世の中とも言えます。
だからそれまでツールについて深く考えてこなかった人が、いきなり「何でもいいから自分で選べ」と言われてしまえば、こう感じるのも無理のないことかもしれません。
「選択肢が多すぎて、どれを選べばいいかわからない」
「わからない」の解決策とは
選択肢は確かに多すぎる。でも正解やそれに近しい「ぶっこわれ装備」がない以上、実際に試してみるしかありません。基本的には。
ならノートもペンも書き方も、手当たり次第に試してダメなら次を選ぶ?
そんなことをクソ真面目にやってたら、お金も時間も足りません。
だからこそ、必要になってくるのがあなたのニーズなんです。そもそも、
- あなたのニーズを完璧に満たすツールは、この世に存在しない (かもしれない)
当然ですよね。
だってA4用紙もシステム手帳も、GoodnotesもScrapboxも、あなたのために作られたものじゃないんだから。
ではここで問題です。
- あなたのニーズとは、一体何でしょう?
内側の情報に目を向ける
一般的な傾向として、外側の情報を記録するとき人は書きすぎる傾向があり、内側の情報を記録するときは書き足りない傾向があります。
(#012 情報の外側と内側)
外側 (Amazonや各種メディア) からもたらされる無数の選択肢に惑わされないためには、内側 (自分) に目を向けることです。そして内側に目を向けるためには、手近にある道具を自由に使ってみることです。
だからあえてこの本では、アナログノートに力点を置いたのではないでしょうか。
アナログはデジタルに比べて、自由度の高い書き方が簡単に実践できます。「自由に書いて」と言われたとき、人によってはこんな書き方をするかもしれません。
あるいはこんな感じかも。
好きなゲームの情報をまとめてみたってかまいません。
まずは自由を制約せず、何らかのテーマについて (あるいはフリーライティングでも) 書いてみること。そしてそれを一定期間続けてみることでしょう。
しばらくすると、何かしらの不満や足りない部分が見えてくるはずです。
- サイズが小さくて、思い切り書けない
- 逆に重くて持ち運びがストレス
- 書き心地が気に入らない
- etc……
それが現在のツールに対するあなたのニーズです。厄介なことに、これがしばらくやってみないとわからないんです。
この時点までくると、選択肢としての情報が欲しくなります。
この本がノートの種類や使い方や書き方について、ここまで多くの情報を詰め込んできたのは、おそらくここで活用する (カスタマイズや新たなツール選択のヒントとする) ためではないでしょうか。
デジタルツールでも、考え方は同じ
これはデジタルでも全く同じです。
いろんなアプリを試しては乗り換える、いわゆる「アプリ難民」状態が長く続いている方は、もしかしたら外部に目が向きすぎているのかもしれません。一旦アナログや、ごくシンプルなツールに立ち返って内側に注目してみることをおすすめします。
心地良さを追求せよ
今回は内容紹介というよりも、何やら語れそうなことを引っ張り出してきて無理矢理つなげただけの感もありますが、そういったある種言語化できていなかったテーマについて「考える」きっかけをいただいたのだとすれば、それはそれで素晴らしい読書体験だったということで。めでたしめでたし。
最後にひとつ、この本に度々出てくるキーワード「心地良さ」について触れておきましょう。
他の記事でも何度かお伝えしているように、どんなツールを使おうが100%の満足なんてものはあり得ません。ではどのタイミングで難民状態やカスタマイズに決着をつけるか。
若干難しいところではありますが、僕はある一定以上の「心地良さ」を目安に考えます。
半年付き合ったパートナーのどこかに不満があったとしても、それを上回る心地良さや安心感があれば、すぐさま別れるなんて結論には達しません。別れは往々にして、小さな不満が積もり積もって心地良さを上回ってしまったときに訪れるんです。
心地良さってのは大事ですよ。それはそのツールとあなたとの相性が、うまくマッチしている証拠かもしれません。
ツール選択の際には、心地良さ、意識してみてください。
どんな人におすすめ?
- 書くことに興味はあるけど、なかなか『書けない』と悩んでいる人
- なんとなく書いてるけど、書いたメモを『活用できない』と落胆している人
- 自分の相棒がなかなか決められない『ツール難民』だと自認している人
ボツ集
はい。最後に本編で惜しくも使えなかった「ボツ集」やりまーす。
あくまでボツ原稿なので、スベってたとしてもスベってるとか言わないように。
当初は「心地良さ」をキーワードに無理矢理忖度しようと考えていたが、忖度に慣れてなさすぎて「なんか違う……」ってなったのでボツ
この本の良さって、なんといっても「心地良さ」だと思うんですよ。まず厚さですね。
見て。このスマートな佇まい。
凛としてるってこういうことよ。さすがです。
分量としても厚すぎず薄すぎずで、ほんと心地良いわー。
でもちょっと残念だなと感じたのは「高さ」なんですよ。
僕最近、通勤電車の中で紙の本を読むことが多くてですね……ブックカバー付けたいんです。
ただこの本は単行本サイズで、文庫用や新書用のブックカバーが対応していません。
どうしようかなーと。「これじゃ電車で読めねぇじゃん」と思って、何気なく本に付いてるカバーを外してみたら……
おいおい……なんだこの心地良いデザインは!
イースト・プレスって出版社はあれか? 表紙デザインをクリスチャン・ディオールにでも外注してんのか?
最高じゃない。もう外出時はこれでいいわ。
「はじめに」の1行目にハマりすぎて何とか取り上げようとしたが、著者と既読者にしか伝わらないのでボツ
さすがに引用しちゃうとネタバレになっちゃうから出せないけどさ……
初っぱなからあの文豪オマージュはダメよ。
エモすぎるでしょ。
さすがに他の本をイジるのは良くないという結論に達したのでボツ
物理的には何の制限もないにもかかわらず、罫線をまったく無視して文字を書くのは心理的に抵抗感があるでしょう。
(#005 罫線の意味)
はい、先生!
なんか心理的に抵抗感を感じてない人がいまーす!